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地域医療再生基金について
2013.12.3
 地域医療再生基金について、大変好ましくない方向性が打ち出されようとしていますので、警鐘の意味で意見を述べさせていただきます。

 ご承知の通り、この基金は、地域医療再生計画に基づく事業遂行の中で、平成22年度の計画策定時以降に生じた状況変化がみられ、それに対処するために生じる予算の不足を補うために、平成25年度から27年度の3年間に、都道府県に設置された基金を拡充するものとされています。
 その事業の中に、在宅医療推進事業があり、新潟県採択として関連団体が連携したモデル事業の実施として1.2憶円が準備されました。本年5月に国へ提出された新潟県地域医療再生計画書、36ページに、都市型の先行事例として私の活動が紹介されています。新潟県におきましては、都市型、離島、山間地の農村部まで地域ごとに在宅医療の提供が異なり、県内4団体を予定することとなり、それぞれ3000万円ずつ、新潟市においては、都市型在宅モデルの実施についての利用可能予算の依頼がありました。

 その打ち合わせが、平成25年11月20日、新潟市保健所にて、保健衛生総務課地域医療推進室仕切りのもと、提案者の新潟市医師会五十嵐氏、済生会第二病院斎川室長と私斎藤、そして、新潟市医師会事務局の鎌田局長、番場次長、真保課長、在宅医療担当井浦氏、新潟市保健所からは田代医監同席のもと開催されました。
 はじめに言えることですが、提案者3名にはあくまでも公平であるはずの行政ですが、医師会事務局をそのまま持ち込んでおりました。このことは、国がすでに日本医師会依存から協力関係へ転換したこと、協力はお願いするが依存しない、すなわち医師会を一つの職能団体とみなしたとする、平成24年4月の方針とはかけ離れ、いまだ医師会のお伺いを立てなければとの旧態依然の体質が変わっていないということであり、まさに三者に公平であるべき場が、このような異様な状況、すなわち医師会事務局監視の下で協議が開始されました。

 3人の事業提案説明に引き続き、とりまとめ役の医療推進室馬場室長より、「県からの提案があり次第早急に計画を上程しなければ補助金を受けられない、時間がない」との判断から、三者共通のIT(すなわち情報共有の手段)に特化して議論を進めてはいかがなものかとの提案がありました。それに対して私は、都市型在宅医療を進めるための根幹として、なににおいてもまず連携拠点整備が必要であると主張いたしましたが、3年間でわずか3000万円であること、県からの提案に返答するにはあまりにも時間がないとするその場での行政、医師会の判断から取り合ってもいただけず却下された次第です。本日の医療計画策定そのものにもかかわってきますが、いわゆる国の理念、「施設中心の医療・介護から可能な限り住み慣れた生活の場において必要な医療・介護サービスが受けられ、安心して自分らしい生活が実現できる社会を目指す」が根本にあるはずです。理念とは、想いがありそれを実現する手立てが述べられたものです。したがって、ツールばかりを整備してもそれを利用する拠点が整備されていなければ、すなわち理念のない事業は、単なる消費予算でしかない、としか言わざるを得ません。
 地域で頑張っている先生方へ事の次第をお話ししたところ、「今回の補助金は我々には大きな額ですが、新潟市全体で考えると少ないのでしょうね。顔が見え関係構築していくことの方がより大切であると思うのですが、致し方ありません。私たちは自分たちで立ち上げの補助金は獲得していくこととします」とのこと。現場で多職種のネットワークを立ち上げ奮闘されているこれらの先生方、同じ医師会員であるのに、この違いはいかがでしょうか。

 現時点での新潟市では、連携することすら醸成していません。

 本年11月10日には、篠田市長がユニゾンプラザで開かれました共生フォーラムで“新潟市がめざす共生のまち”との題で基調講演されました。その中で、安全安心な健幸都市づくりのためには、「在宅医療・介護が充実すること」が大切であり、少しずつではあるが各地域で始まった在宅医療ネットワーク推進の取り組みを多職種そして一般の方々へ紹介されました。そして、在宅医療ネットワーク活動に対しての補助、在宅医療連携拠点の整備、シンポジウムの開催を三本柱とし、さらに地域における連携のあり方、多職種連携研究、そして認知症地域連携ツールの作成まで言及されました。当然、ここにおいでの行政の方々は篠田市長の最新のお考えをご存じのことと思います。ですから、それらを実現するツール、手立ての一つでしかないIT整備がなぜ早急に必要なのか、理解ができません。このことから、今回の行政の地域医療再生基金についての考えは、あくまでも消費予算であるとしかとらえてないのでは、と言わざるを得ません。

 昨年の医療連拠点事業応募から、今回の地域医療再生基金申請まで新潟県とかかわらせていただき、平成24年度の厚労省主催、都道府県リーダー研修会を履修し、さらにはモデル事業としての柏プロジェクトに参加させていただき、また、本年11月17日に東大キャンパスで開かれました、東大主催、日本医師会後援の、「国家戦略としての在宅医療シンポジウム」にも招待され、全国の流れに感動し、新たな在宅医療を構築することが始まるのだと想いを馳せてきたのですが、在宅医療についての、根幹としての理念について理解のない、新潟市と医師会には、ただただ残念でしかありません。もう一度、平成24年4月に公表された医療計画の理念、「在宅医療・介護あんしん2012」に立ち返って医療計画を策定すべきと、お話させていただきます。

 新潟市は、昨年すでに医療連携拠点事業の全国105か所の一つに採択された、地方型で先行している魚沼市から何世紀も遅れることになります。もはや、行政主導、そして医師会を含めた多職種協働で行わなければ地域包括ケアシステムは完成しないところまできています。

平成25年11月26日
在宅医療部会 委員
斎藤内科クリニック 院長 斎藤 忠雄
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