学術活動
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No.09 2009.12.14 UP
在宅医療の先進的な講演会
県医師会主催:主治医研修会 〜 平成21年12月13日 〜
『患者本位の地域医療と求められる主治医機能〜尾道方式』と題して、尾道市医師会会長である片山医院院長、片山 壽先生の講演がありました。
(要約)
 2009年の尾道市の高齢化率は31.8%であり全国でも有数の高齢化となっている。
その中にあって、高齢者のがん患者も急増している。尾道市では、ALS(always love and support)をスローガンに医療にあたっている。

 End of life care〜ご本人が希望する最期を叶える地域医療が望まれている。

 「施設」も「在宅」も『地域』という統合概念をもって、開業医が猛烈に主治医機能を勉強し、個人の尊厳を重視することである。在宅主治医は、地域医療連携のエンジンとして患者さんのEnd of life を見守ることとなるが、そのシステムを補完するのは、頻回に開かれるカンファレンスである。

 在宅チーム医療は、すでに病室から始まる。病院主治医等からの連絡を受けすぐに病棟でカンファレンス。翌日もしくは退院直前に、その時々の諸問題点を解決すべく、病院主治医、病棟看護師、ソーシャルワーカー、患者さん及びその家族を交えて、在宅チームとともに退院時共同カンファレンスに臨む。

 在宅となってから、1〜2週間後に病院チームを交えてのカンファレンス。
24時間体制となるように、1〜2の訪問看護ステーション、外科、泌尿器科、皮膚科そして欠かせない歯科のドクター、そしてケアマネージャーや在宅NST、そしてご家族も参加する。
カンファレンスはおおむね15分。退院後のカンファレンスに病院チームが参加することで、病院自体の意識変革が著しいことに気づく。

 患者さんにとっても大切なのは、自分の望む最期を託す主治医を持つこと

 痛みをなくすため、迅速CVリザーバー(ポート)造設入院を行うこともある。

 長期化した場合には、短期プログラム入院(5日間)を行い、リザーバーの取り換えや各種検査を行うこともある。病院スタッフにとっても、経過をみることが非常に大切。インフォームドコンセントの見直しもありうる。

 在宅緩和医療では、痛みのない自宅での最期を目標とする。主治医に対して信託(信頼よりももっと高度)。

 以上のことを実行するには、まず病院主治医がしっかり在宅を向いてくれていなければだめであり、また、開業医は僅かな時間に編隊を組み在宅治療に当たるという機動力が不可欠である。これらのタイミングをはずしてはならない。在宅チームに望まれるのは、スピード&プロフェッショナルであること。在宅主治医がオールマイティである必要はなく、それぞれの専門医とチームを組むことが、患者さんにとっても安心となる。

 三代目の片山医院を引き継がれて、地域医療にとって何が必要かをいち早く感じ、痛みのない尾道を作ると宣言して診療にあたられた結果だと思います。なぜこのように頑張れるのか?それは、患者さんからの、痛みから解放されたときに自然に発せられる、『ありがとう』の言葉だ、と話されました。私たち『みとりびとチーム』でもすでに取り組んでいたことも多くあり、そうそうと頷いていましたが、まだまだ不足していたところも見つかりました。

 まず、諸先生方の実践されてきた経験を『模倣』し、それらを『蓄積』し、新たなる≪新潟方式≫を『創造』すること、それらが私の使命と感じました。(『模倣・蓄積・創造』とは、私の恩師であります新潟大学医学部第三内科教授、故市田文弘先生の座右の銘です。)
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